リレー連載第4回 志磨珠子役/宮本侑芽

 

――最初に原作をご覧になったときの感想はいかがでしたか?

宮本 キャラクターがとてもかわいかったので、ふんわりとしたラブコメ作品だと思って読み進めたら、ただ楽しいだけではなく人間の内面がしっかり描かれていて。その掘り下げ方が強く印象に残りました。キャラクターの深い感情や重い過去が作品のリアリティに繋がっていると感じたので、オーディションでは感情の揺らぎを表現しようと思いました。

 

――オーディションは最初から珠子役を受けたんですか?

宮本 はい。原作を読ませていただいて、珠子がなぜツンツンしているのかもわかっていたので、その後の珠子が連想できるようなお芝居を意識しました。

 

――その際、何かディレクションはありましたか?

宮本 最初は少しリアルなお芝居に寄せすぎてしまって、コミカルなシーンで「リアルなお芝居からもう少し落差をつけてやってみてください」と、ディレクションをいただきました。

 

――では、改めて珠子のご紹介をお願いできますか?

宮本 志磨家という名家ならではの複雑な家庭環境で育ったこともあり、かなり気が強く、兄の珠彦にも当たりが強いです(笑)。とはいえ、まだ12歳なので子どもらしい部分もありますし、子どもであるがゆえに強がってしまう部分もあるのかなと思います。

 

――身長も高くて、非常に大人びた印象を受けました。

宮本 珠彦と夕月は意外と子どもっぽいところがあって、三人並んだときに「誰が一番年下だっけ!?」と思わされる描写が原作にもたくさんあるんです。なので現実の12歳より大人びた女の子を意識して、お芝居をするときは私も姿勢を正しながら演じました。

 

――アフレコの感触はいかがでしたか?

宮本 悪女風のキャラクターを演じたことがなかったので、かえって振り切ってお芝居ができました。すごく気持ちよく演じられて、その部分での苦労はなかったです。ただ、オーディションでもディレクションをいただいたコミカルなシーンとシリアスなシーンの落差は本番でも結構大変だった記憶があります。

掛け合いのテンポが速いうえに、珠子が物語の展開を作っていくシーンも多くて。私は今まで相手についていくような、どちらかと言えば受け身の役どころが多かったんですが、珠子は自分から場をかき乱すような女の子。言葉に力を持たせるようなお芝居を心がけました。

 

――では、現場でも宮本さんが引っ張るような感じだったんですか?

宮本 引っ張るというほどではありませんが、珠彦や夕月との掛け合いではなるべくグイグイいくようにしました。特に前半の珠彦は沈んでばかりなので、「珠子が引っ張っていかないと!」という気持ちが強かったです。ただ、珠彦は受け身でもお芝居では小林(裕介)さんがリードしてくださる場面がたくさんあって。とても安心してお芝居をぶつけることができました。

 

――今はアフレコ現場も感染症対策で人数が制限されていますが、掛け合いは無事にできたわけですね。

宮本 はい、掛け合いを重視して録っていただいたので。アフレコは部屋を二つ使って、最大5人で録ることができました。スタッフの皆さんのお気遣いがありがたかったです。

 

――珠子と珠彦、夕月の関係で注目してほしい部分はどんなところですか?

宮本 珠子は寂しがりやな一面があるので、それがどのタイミングで出てくるのか楽しみにしていただきたいです。なぜ気丈に振る舞わなければいけないのかがわかってくると、より珠子の魅力が増すと思います。徐々に変化していく珠彦と夕月への感情も、緩やかに変化をつけるのは難しかったんですが、とても楽しかったです。

 

――珠彦と夕月の関係性については、どうご覧になりましたか?

宮本 羨ましいです!(笑) 特に二人が並んで町を歩くシーンが印象に残っています。何気ないシーンなんですが、カメラに背を向けて歩いているのに明るい様子が伝わってきて、微笑ましい気持ちになりました。

 

――夕月についてはいかがでしょうか?

宮本 あんなに小柄でかわいらしいのに、珠彦や珠子以上に意志が強いんです。何が何でも珠彦様が第一。でも、しっかり言うべきことは言う。夕月が珠彦を引っ張っていくことで、最初はネガティブだった珠彦が少しずつ変わっていくんです。しかも珠彦だけではなく、夕月のおかげで周囲の人たちの表情もどんどん柔らかくなっていって。それが本当に素敵だなと思いました。

 

――大絶賛ですね!

宮本 夕月はもう理想の奥さんすぎます! 珠彦へのちょっとした気遣いや言葉からも夕月の優しさが伝わってくるので、ぜひ彼女の振る舞いすべてに注目していただきたいです。私も大好きになりました。

 

――一方、珠彦はちょっと頼りないところもありますが……。

宮本 そうですね(笑)。でも、いいところもあるんです。例えば、まわりがよく見えているところ。彼がペシミスト(厭世家)なのは志磨家の問題もありますが、まわりが見えてしまうがゆえに、まわりと比べてしまい自分を貶めてしまうからなんだと思うんです。本来は優しくて気遣いのできる人なので、夕月と一緒に過ごす中で、「まわりが見える」という力がどう発揮されるのかも見どころになっていくと思います。

 

――他に気になるキャラクターはいますか?

宮本 綾ちゃんです! 一見すると飄々とした印象が強いと思いますが、いきなり珠彦の前に現れて珠子以上に場をかき乱していきます。現場ではなかなか綾とは絡めなかったので、どんな描かれ方をしているのか私も楽しみにしています。

 

――では最後に、放送を楽しみにしている方へメッセージをお願いします。

宮本 繰り返しになりますが、夕月のかわいらしさ、素直さ、純情さが身に沁みる作品です。どんなに大変なことがあっても彼女のような子がいたら乗り越えられる。そう思わせてくれる力が夕月にはあります。視聴後には、人と人との繋がりが愛おしく思えたり、ふと大切な人に思いを馳せたりと、きっと心が豊かになるんじゃないかなと思います。ぜひ最後まで楽しんでください。よろしくお願いします。

 

 


◆コラム
「大正オトメ御伽話」の魅力をひと言で表すと?

夕月なしでは、誰も、何も変わらない……。そう思えるくらい夕月の純情さ、素直さがこの作品の重要なポイントになっています。そして何より、(会沢)紗弥ちゃんのお芝居が本当に素敵なんです! 一つ一つの音が素直で、温かくて。紗弥ちゃんの声を受け止め、そのまま感情を返す形でお芝居ができたので、紗弥ちゃんへの感謝の気持ちも込めました。

 

 

衣装協力:学校法人清水学園 専門学校清水とき・きものアカデミア
( @shimizugakuen )
撮影場所:代官山鳳鳴館 https://instagram.com/homeikan/
インタビュー:岩倉 大輔