リレー連載第3回 立花夕月役/会沢紗弥

――原作の第一印象はいかがでしたか?

会沢 第1巻の表紙を見た瞬間、引き込まれました。お人形さんのようにかわいい夕月と鮮やかな色彩のお着物が素敵すぎて、きっとかわいくてほのぼのとした作品なんだろうなと思って読み始めたら……意外と暗いところもあって、そのギャップに驚かされました。

アニメのキービジュアルも鮮やかでかわいらしいので、放送が始まって視聴者さんがびっくりしないかドキドキしています(笑)。でも、暗いところもあればコメディチックなところもたくさんありますし、かわいらしいキャラクターもたくさん登場して、何よりその物語に感動するので、ぜひ最後まで見ていただきたいです!

 

――確かにドラマのようですよね。

会沢 タイトルに「御伽話」と入っていますが、キャラクターに暗い過去があったり、時代的な大変さが描かれていたりして、すごく現実感のあるお話なんです。それをみんなで乗り越えていくところが魅力的だなと思います。

 

――会沢さん演じる立花夕月はどんな女の子ですか?

会沢 夕月は明るくて、元気で、いつも笑顔で、家事もできて……と、あらゆる褒め言葉を詰め込んでも足りないくらい完璧な女の子です!

 

――ははは(笑)。ご自身と比べてどうですか? 似ている部分などはありますか?

会沢 いえ、会沢紗弥はわりと珠彦寄りだと思うので……全然似ていないですね。もう悲観、悲観、悲観ばっかりで、よく沈んでいます(笑)。

 

――そうなんですね。じゃあ、夕月のようなお嫁さんがいたら……。

会沢 最高ですね! 夕月はただ明るいだけではなく、まわりの人をぱぁっと明るくさせるような、不思議な魅力を持った女の子なんです。

 

 

――その夕月を演じる上で、どんなことを大事にされましたか?

会沢 どんな状況でも、どんなセリフでも「優しさ」を一番大事にしました。とにかくまわりがよく見える子なので、落ち込んでいる人や大変な状況にいる人がいたら、その人が一番必要としている言葉を投げかけられるんです。夕月は常に人のために生きている。その気持ちを忘れないようにしました。

……でも、それがすごく難しかったです! みんなを照らすような明るさってなんだろうってずっと考えていましたし、プレッシャーも大きかったです。

 

――音響監督の郷文裕貴さんから、何かディレクションはありましたか?

会沢 オーディションの原稿に、夕月が珠彦に詰め寄るようなシーンがあったんです。私は夕月が怒っているものと考えて演じたんですが、郷さんから「このシーンは、夕月は怒っていないです。夕月にあるのは優しさだけで、そのセリフは珠彦を思って言っています」とのディレクションをいただいて、目から鱗が落ちました。

確かにそのときの珠彦に必要な言葉だなと思いましたし、少し強めに言って目を覚まさせるのも優しさだな、夕月は珠彦のためにこの言葉を選んだんだなって納得できたんです。夕月の優しさ、人間性に感動しました。

 

――ただ感情的になるような子ではないと。

会沢 はい、誰にどんな感情をぶつけるときも必ず優しさが伴うんです。

 

――珠彦役の小林裕介さんとの掛け合いはいかがでしたか?

会沢 実は、小林さんとは同じ作品に出演させていただいたことはあるんですが、お会いするのは初めてで、状況が第1話の夕月と珠彦にすごく似ていたんです。二人がぎこちない雰囲気だったのと同じように、私たちの仲もまだ深まっていなくて(笑)。でも、それがかえって夕月と珠彦の初々しさにも繋がったのかなと思います。あ、小林さんとはアフレコやイベント出演を重ねて、だんだんお話しできるようになりました!

 

――まもなく放送される第1話で、何か印象的なシーンはありますか?

会沢 珠彦の声を初めて聞いたときに、「暗っ!」って思ったんです(笑)。小林さんはぼそぼそと独り言を喋るような役作りをされたんだなって驚きましたし、その暗さが周囲に伝染するようなお芝居の力を感じたんです。例えば、珠彦が「死にたい」と言ったら、こちらまでそう思ってしまうようなものすごい威力というか……。でも、夕月としてその暗さや壁を突破したいと思えて、すごくやる気が出ました。

 

――夕月と珠彦の関係性についてはいかがですか?

会沢 いい関係だなぁと思います。のちのち夫婦になる二人ではあるんですが、最初は形式だけなんです。でも、そこをスタートに形式だけだった関係がどんどん変わっていって……。演じていても二人の変化が毎回実感できて楽しかったですし、現代ではあまり見られない関係性なのも新鮮でした。

 

――二人の関係で特にドキドキしたポイントなどはありますか?

会沢 常にキュンとしていました! 序盤でいいなと思ったのは、珠彦の暗いセリフの中にも小林さんの声の優しさが滲み出てくるところです。それがすごく珠彦らしいなって思いました。

最初、珠彦は嫁いできたばかりの夕月を避けようとするんです。でも、本当に夕月に興味がなかったら、ずっと部屋に籠もったり布団の中にいたりするはずなのに、夕月の話にちゃんと耳を傾けてくれて。一見ぶっきらぼうで冷たく見えるけど、根は優しい人なんだなというのが、珠彦の行動からも声からも感じられてドキドキしました。

 

――夕月と珠彦以外で注目してほしいキャラクターはいますか?

会沢 夕月が女学校時代に仲良しだった同級生の美鳥さんです。メールもSNSもなく、交通手段も限られている時代に、学校を出てもずっと繋がっていられるのがすごいと思いました。令和に生きる人間からすると、手紙だけでやりとりをするというのが全然想像できなくて(笑)。その友情に心を打たれました。

夕月が珠彦に見せる顔とはまた違う、友達に対しての顔が見られるのも美鳥さんと一緒にいるときなので、ぜひ二人の関係にも注目していただきたいです。

 

――では最後に、放送を楽しみにしている方へメッセージをいただけますか?

会沢 最初はぎくしゃくしている夕月と珠彦ですが、話数を重ねるごとに二人の関係性がどんどん深まっていくので、最終的にどんな変化を見せてくれるのか最後まで見守ってください。

それから、アニメで描かれる大正時代の生活や流行などにも注目していただきたいです。街並みや文化が忠実に再現されていて、私も当時の流行歌を歌う機会がありました。アフレコ現場で生で歌うという貴重な体験をさせていただいたので、こちらも楽しみにしていただけたら嬉しいです。

 

 


◆コラム
「大正オトメ御伽話」の魅力をひと言で表すと?

夕月を演じて感じたことですが、こんなに人のために生きられる人は見たことがないですし、誰かを笑顔にできる人って素敵だなって思いました。落ち込んでいるとき、何かに行き詰まっているとき、そういったときに心を温めてくれる作品です。

 

 

衣装協力:学校法人清水学園 専門学校清水とき・きものアカデミア
( @shimizugakuen )
撮影場所:代官山鳳鳴館 https://instagram.com/homeikan/
インタビュー:岩倉 大輔