リレー連載第9回 白鳥 策役/土岐隼一

――原作の第一印象について聞かせてください。

土岐 幅広くマンガを読むタイプの人間なので、もともと「大正オトメ御伽話」は読ませていただいていたんです。素敵だなと思ったのは、今の時代と全然違う世界観を現代に寄せて描くのではなく、その時代の雰囲気を表現しきっているところ。僕は異国情緒に溢れた作品が特に好きなんですが、この作品は日本を舞台にしながらもどこか異国の趣が感じられて、そこに惹かれました。

 

――本作は珠彦と夕月の恋愛が描かれますが、ストーリーについてはいかがでしたか?

土岐 恋愛といっても、恋をして彼氏、彼女になって……という恋愛ではなく、自分の意思とは別に夫婦という関係になった二人が、ゆっくりお互いを理解していくというお話なんです。今の時代ではほとんどなくなった、想像しづらい関係ですが、「昔はこういうことがあったんだな」と納得できるくらい、時代背景が細かく丁寧に描かれていて。当時の恋愛をリアリティたっぷりに感じられるのがいいなと思いました。

 

――確かに時代背景がリアルに感じられる作品ですよね。

土岐 志磨家の問題をはじめ、今では考えられないような騒動が起きるので、見ていて苦しくなる部分もありますが、それぐらい真に迫ってくる表現が素晴らしいですし、ぜひその人間ドラマを見ていただけたら嬉しいです。

もちろん心温まるシーンや楽しいシーンもたくさんあります。どの登場人物にも悩みの種はたくさんあるけれど、でもそれはそれとして楽しい時間をすごそうとする。それって、どの時代のどんな人にも共通する人間らしさだと思うんです。その表現が僕は好きですね。

 

――珠彦と夕月の関係性についてはいかがでしょうか?

土岐 この作品は「言葉」というものがとても大切に扱われているなと感じるんです。珠彦くんはユヅちゃん(夕月)のために恥ずかしがりながらも一生懸命、言葉を紡いでいこうとする。そして、その言葉によってユヅちゃんもまた動かされる。その逆もありますが、言葉を交わすことで関係性が育っていくんです。

今だったらハグをしたり、キスをしたりと恋人同士なら簡単にスキンシップができるかもしれません。でも、この時代はそうはいかない。ましてや女性からそういうことを求めるなんて難しかったわけです。だからこそ言葉を紡ぐことの重要性というものが、この時代では大きかったんだと思いますし、それがこの作品でも大切に扱われていて。二人の間には言葉によって作られる情緒があるなと感じました。

 

――では、土岐さん演じる白鳥策がどんな役どころなのか、ご紹介いただけますか?

土岐 相手の懐に入っていくスキルがとんでもなく高い子です。初対面だろうとなんだろうと一気に距離を縮めてくるタイプなので、友達がいない珠彦くんからすれば驚きしかないと思います(笑)。その二人が出会い、どんな影響を与え合うのか、楽しみにしていただけたら嬉しいです。

 

――土岐さんと共通する部分などはありますか?

土岐 10代の頃の僕は策くんとは真逆の人間性で、どちらかというと珠彦くんに近かったかもしれません(笑)。世の中を嫌っていたというわけではなく、パーソナルエリアがどこまでも小さかったので、人と仲良くなれるスキルがほしいなと思っていたんです。でも、そういうスキルは全然なかったですし、相談できる相手もいなかったので、策くんのようなタイプには憧れましたね。

 

――策を演じる上では、どのようなことを意識されていますか?

土岐 音響監督さんに言われたのは、陽のイメージを大事にしてほしいということでした。主人公の二人は風当たりが強く、暗い道を進んでいる。その中で初めて出てくる明るくて楽しい存在であり、作品の空気をがらりと変えるのがことりちゃんと策くんなんです、と。

他人の懐に入り込むのって勇気がいりますし、どこまで踏み込んでいいのか悩むことってあると思うんです。でも、「策くんは強めに踏み込んでいける」というディレクションをいただいたので、珠彦くんのパーソナルエリアを侵しにいくくらいのイメージで演じました。

 

――策はただテンションが高いというわけでもなさそうです。

土岐 そうなんです。懐に入るのがうまいだけではなく、相手がちょっと引いたなと感じたら、一歩引けるタイプ。相手との関係におけるベストな距離を測るのがとても上手なんです。珠彦くんと夕月ちゃんとでは距離の取り方が少し違いますし、おちゃらけたかと思えば、真面目な態度で相手と向き合うこともできる。

きっと彼は意識的にできていると思うんですが、相手が自分の行動や言葉をどう受け止めるかで言葉の紡ぎ方や表情が変わるんです。それが面白いところだなと思いましたし、僕も意識して演じるようにしました。

 

――双子の妹であることりについてはいかがでしょうか。

土岐 一般論として、双子って共通点が多かったり、お互いにわかり合っていたりするイメージが強いと思うんですが、当然人間なので似ている部分もあれば個として全然違う部分もあると思うんです。策くんとことりちゃんも、ただ陽気な性格が似ているだけではなく、双子だからこその悩みを抱えています。

当然、違う部分があるし、相手に伝えられないこと、遠慮していることもたくさんあって。そういった部分が細かく丁寧に描かれ、記号的ではないリアルな双子像を見せてくれるのがいいなと思いました。

 

――アフレコでは、ことりを演じる伊藤彩沙さんとどんなやりとりがありましたか?

土岐 策くんとことりちゃんが京都出身で、伊藤さんも京都出身だったので、本番前に関西弁講座を受けました(笑)。台本をいただいた段階で、関西出身の友人にイントネーションを確認したんですが、やはり同じ関西でも地域によって全然違うので、アフレコのときに改めて伊藤さんに確認していただいたんです。収録前にいろいろ楽しくお話しできたので、本番へのいい助走になりました。

 

――そして、土岐さんは本作のEDテーマも担当されています。「真心に奏」はどんな楽曲なのでしょうか?

土岐 アニメと紐付けつつも、僕の好きな現代のJ-POPっぽさもアレンジで取り入れています。どこか懐かしさが感じられ、思わず口ずさみなら歩きたくなるような楽曲です。

繰り返しになりますが、この作品は言葉というものが大切に扱われています。それが人物の心情、真心に結びついていると感じたので、「自分の心を奏でていきたい」という思いを込めて「真心に奏」というタイトルにしたんです。一つ一つの言葉を大切に紡ぎたいという思いで歌わせていただきました。

 

――では、放送を楽しみにしている方へひと言お願いします。

土岐 ジャンルで言えば恋愛ものになりますが、そのひと言では片付けられないたくさんのドラマ、事件、関係性が描かれていきます。恋愛だけを楽しみにしていると心が苦しくなるかもしれませんが(笑)、それでもみんなの幸せを願いたくなるくらいどのキャラクターも魅力に溢れています。僕たちも作品を彩れるよう全力で演じさせていただきましたので、放送を楽しみにしていてください。

 

◆コラム
「大正オトメ御伽話」の魅力をひと言で表すと?

旧字体の「粋(いき)」です。男女関係なく、あの時代に生きていた人の「こう生きたい」「こうありたい」という思いを強く感じましたし、その思いから生まれてくる言葉、行動がかっこいいんです。ただ、かっこいいという言葉だけでは少し足りなくて。物語の根源にあるドラマチックさや大正ロマン的なものも込めて、「粹」にしました。

 

 

衣装協力:学校法人清水学園 専門学校清水とき・きものアカデミア
( @shimizugakuen )
撮影場所:代官山鳳鳴館 https://instagram.com/homeikan/
インタビュー:岩倉 大輔